今回のテーマは「養育費」についてです。
再婚したら養育費の減額請求を元パートナーからされているけど、応じなければならない?
離婚時に一度決めた養育費は、減額されたくないというのが本音ですよね。
もっとも、相手方も年収が減ったり、再婚によって扶養家族が増えたりすると、経済的にこれまで通りの養育費を支払うのが困難となるケースも多いものです。
そんな場合に気になるのが、相手からの減額請求に応じなければならないのか、ということではないでしょうか。
そこで今回は、
- どのようなケースで養育費の減額が認められるのか
- 養育費の減額を求める相手はどのような手続き行うことになるのか
- 養育費の減額を回避するためにポイント
について分かりやすく解説していきます。
1養育費の減額を請求されやすいケースとは?
元配偶者から養育費について減額を請求されやすいのは、どのようなケースが挙げられるのでしょうか。
法的に減額が認められるかどうかはともかく、先ずは実際に減額を請求されやすいケースについて確認していきましょう。
(1)支払者義務者の収入減が生じた
支払い義務者である相手方にも、当然ながら生活がありますから、収入が減少して養育費の支払いが苦しくなった場合には、減額を請求してくることがとても多いです。
受け取る側としては、収入が減ったとしても従前どおりの金額を支払ってほしいと考えるかもしれませんが、そこまで求めることは難しいのが現実です。
離婚成立から2年を経過しました。子がおりましたので、公正証書にて養育費を大学卒業まで月額2万円支払うことを取り決めました。(互いの収入から養育費算定表に基づく取り決めとしました)
現在、今後のスキルアップのため仕事を辞め、大学に通うことを決意しました。そのため、今後の収入はゼロとなり、アルバイトで生活費と学費を捻出することになります。退職金もその費用に充てる必要があります。養育費支払いの義務があることは承知していますので、今後は、アルバイト収入から月1~2万円程度の支払いが限界だろうと考えております。(養育費算定表に基づく判断)
ご相談は、スキルアップという自己都合で仕事を辞めて収入がなくなる場合でも、養育費の減額は一般的に受け入れられるものでしょうか?話し合い等では解決せず、調停等にもつれ込むことを予想しています。
引用元:OKWAVE|養育費減額
(2)支払義務者に新たな交際相手ができた
支払い義務者が再婚し、子どもが生まれた時などは養育費の減額を請求してくることが多いですが、その前に交際相手ができた時点で減額を請求してくることも、実務上よくあります。
相手方としては、今までどおりの金額を支払い続けるのでは交際相手が再婚に応じてくれないために減額してほしいということでしょう。
さらには、交際相手からも減額を求めてくるケースもあります。
2年前に離婚が成立したシングルマザーです。
子供は1人、未就学児です。
元夫は生活費を入れないモラハラ夫です。
1年ほど前に彼女ができたそうで、養育費をなしにしろと言ってくるようになりましたが、一度も支払いがなく給料を差押えて回収しています。
連絡がしつこくなり、電話番号を変えたら、手紙が届くようになり、受け取りを拒否したら、実家にかかるようになりました。
最近は、彼女からも執拗に連絡があり、関わるな、養育費は払わない、縁を切れと言われています。
関わってほしくないのは私の方ですが、養育費は必要なので、差押えを取り下げるつもりはなく、元義両親に報告したら、申し訳ない、二度とかけないように強く言っておくからと言われましたが、再度連絡がきて、私をなめるな、子供は彼の子じゃないと言い出して、電話の奥で元夫の声が聞こえてきました。子供は確実に元夫の子です。
毎日落ち着かないし、子供のことを想うとかわいそうで、家族にも申し訳なくなります。
(3)支払義務者が住宅ローンを抱えている
支払義務者が住宅ローンを抱えているケースも、養育費の減額を請求してくることがとても多いです。
住宅ローンで購入した不動産に離婚後、奥さんや子どもが住んでいる場合は、元夫が「住宅ローンに加えて養育費まで支払うのは負担が重すぎる」などと主張してくることが考えられます。
元夫自身がその家に住み続けている場合でも、「住宅ローンの支払いが苦しいので、養育費を減らしてほしい」などと主張してくることは非常によくあるケースです。
2 養育費の減額請求の法的手続き
それでは、いったい相手方はどのようにして養育費の減額の手続きを進めてくるでしょうか。
順に確認してみましょう。
(1)まずは養育費について『話し合い』
まずは話し合いで養育費を減額できないか主張してくることになります。
ここで内容証明などの書面が届いたり、電話で減額したい旨の連絡を受けたからといって必ずしも減額に応じなければいけないわけではありません。
もし、あなたが減額されるのが困るということであれば、減額には応じられない旨を伝えましょう。
これは直接会って養育費の減額について話し合った場合でも変わりありません。
(2)養育費減額請求調停の申立て
あなたが話し合いでの減額を拒否した場合、相手方は養育費減額請求調停を申請してくる可能性があります。
この場合、次にような流れで進んでいきます。
①減額をしたい支払い義務者から調停を申し立てられる
支払い義務者である相手方が家庭裁判所に調停の申立てをすると、家庭裁判所から調停申立書のコピーの書面があなたに届きます。
その後、家庭裁判所にて調停期日が決定され、調停期日呼び出し状が届きます。
②養育費減額請求調停の流れ
養育費減額請求調停は次の流れで進みます。
- 第一回の調停
- 第二回以降の調停(話し合いがまとまるまで月一回のペースで行われます)
- 調停の終了
(3)家庭裁判所の審判
もし、ここまでご説明した調停でも話し合いがまとまらなかった場合は、自動的に審判の手続きへと移ります。
この審判では、裁判官が一切の事情を考慮して、養育費を減額すべきかどうか、減額する場合はいくらにすれば良いかを改めて決めることになります。
そうは言っても、よほど特別な事情がない限りは、裁判所の養育費算定表に従って金額が決められます。
したがって、もともと養育費算定表よりも高額の養育費を取り決めていた場合や、離婚後に相手方の収入が減っていたり、あなたの収入が増えていたりする場合は、審判で養育費が減額される可能性があります。
3 どのような基準で養育費は減額されるのか
もとより「養育費」は、
- 支払義務者の年収
- 受取権利者の年収
- 子どもの年齢
- 子どもの人数
などの事情の一切を総合的に考慮して決められます。
ですから、離婚後にこれらの要素に変化が生じたケースにおいては、養育費の減額が認められやすくなると考えられます。
では、減額が認められるケースを具体的にみていきましょう。
(1)相手方に減収が生じた
支払義務者である相手方の収入が減ってしまったたケースにおいは、金銭を支払う余裕がなくなりますので、養育費の減額が認められやすいです。
しかしながら、支払義務者の収入が減ったケースの全てにおいて自動的に減額が認められるわけではなく、次に要件を満たす必要があります。
①やむを得ない事情が存在する
いわゆるリストラで仕事を失った場合や、病気・怪我などで働けなくなって収入が減少した場合は、やむを得ない事情があるといえますから、養育費の減額が認められる可能性が極めて高いです。
一方、特段の事情もないのに給料の低い会社に転職したり、やりたいことがあるからフリーランスになるなどといって自ら仕事を辞めたような場合は、やむを得ない事情には当たらないと考えられるので、養育費の減額は認められない可能性が高いでしょう。
②帰責事由がないこと
収入が減った理由について支払い義務者本人の帰責性が認められる場合には、養育費の減額が認められないことがあります。
具体例として、仕事をサボったために収入が減った、会社のお金を使い込んだなどの不正行為が発覚したことから減給処分とされた、などといった場合には、養育費の減額を認めることは相当ではありません。
実際に収入が減っていたとしても、上述のようなケースにおいては「潜在的な稼働能力があるから養育費は支払うべき」と考えられる傾向にあります。
③離婚時に予見できなかった事情の変化があったこと
将来の事情の変化などについても、離婚時に予測できるものは折り込んだ上で養育費の金額を取り決めたはずであると考えられます。
ですから、養育費の減額が認められるのは、離婚時に予見できなかった事情の変化があったことにより、支払が困難となった場合に限られます。
具体例としては、親が高齢や病弱であるために介護や看病にお金がかかるといった事情は、通常はある程度、予測可能と考えられます。
もっとも、親が急病で倒れたり、容態が急変したような場合で、離婚時に予測できなかったといえる場合には、養育費の減額が認められることもあるでしょう。
(2)受取権利者の収入が増えた
もとより、子どもの養育費は両親が「分担」して負担すべきものですので、受取権利者の収入が増えた場合には、相手が支払うべき養育費の金額は減額されることになります。
「働けば損する」という気持ちになってしまうかもしれませんが、子どものためにはできる限り多くのお金を確保することを考えるべきでしょう。
(3)支払義務者の扶養人数が増えた
支払義務者が再婚し、新たに子どもをもうけた場合は、当然ながらそちらの子に対しても扶養義務が生じます。
そのため、前婚の子どもへ振り向ける養育費は減額されることになります。
なお、再婚相手に連れ子がいる場合、支払義務者と連れ子が養子縁組をすると法律上の親子となりますので、扶養義務が生じます。
この場合も同様に、前婚の子どもへの養育費は減額されます。
(4)子どもを扶養する人ができた
ここまでとは反対に受取権利者が再婚し、再婚相手と子どもが養子縁組をした場合も、再婚相手にその子の扶養義務が生じます。
ですから、元配偶者が支払うべき養育費は減額されます。
再婚相手の収入によっては、元配偶者の養育費支払い義務は免除される可能性もあります。
(5)支払義務者が受取権利者の住居費用を負担しているケース
婚姻中に住宅ローンを組んで不動産を購入した場合、離婚後は妻子がその家に住み続け、住宅ローンは夫が支払い続けるというケースがよくあります。
妻子が住む家のローンを支払うということは、住居費用を負担することになりますから、養育費としての性質を有する支払いと考えることができます。
また、住宅ローンの支払いに加えて養育費の支払を取り決めている場合、その合計額が裁判所の養育費算定表の金額を超えている場合には、減額が認められる可能性があります。
もっとも、その家に支払義務者が住み続けて自分で住宅ローンを支払い続けているケースにおいては、この支払いは自身の生活費の負担に過ぎませんから、ローンの支払が苦しいという理由で養育費を減額することは通常認められません。