大きな脅威「バイトテロ」

「バイトテロ動画」と呼ばれる、スタッフや来店者が店の商品に悪質ないたずらをし、その様子を撮影してSNSなどにアップロードする行為が、いま店舗や会社の経営にとって大きな脅威となっています。
このような動画が一般消費者の目に触れてしまうと、ブランドの信頼が大きく損なわれるだけでなく、それに伴う株価の下落や客足の減少など実際の被害も想像を絶する金額になることがあります。

そこで今回は、バイトテロへの対象方法について、それぞれ詳しくご紹介していきます。

ニュースやインターネット上で不適切動画による炎上騒ぎを目にし、「うちの店は大丈夫だろうか…」と不安になってしまった皆さんにとって、この記事が万が一のトラブルへの備えとなれば幸いです。

1.バイトテロは大きな脅威であることを理解しよう

まず、バイトテロ動画が会社や店舗にもたらす影響について具体的にご紹介していきます。
「そもそもバイト動画ってどんな動画のこと?」とご存知のない方のために、世間から大きな注目を集めた事例をいくつかの実例をご紹介いたします。

(1)不適切動画が頻発

バイトテロ動画の投稿によって炎上騒ぎとなった主な事例は2019年に集中しており、1月末~4月末という短い期間の中だけでも20件以上もの事例が確認されています。

この一連の騒ぎの中で、過去に撮影したと思われる動画が投稿されているケースもありますが、いずれも最初はInstagramやTikTokなどの動画共有サービスに投稿が行われ、その後TwitterなどのSNSで拡散されて事態が大きくなるというパターンが大半を占めている現状があります。

また、動画の内容は飲食店やコンビニの従業員が店内でふざける・商品にいたずらを行うといったものが中心になっており、中には店を訪れた客による投稿もあります。

【不適切動画の一例】

会社・店舗投稿日時動画の内容
すき家2019/01/21店内で床に氷を投げ、従業員の股間に調理器具(おたま)をあてる
くら寿司2019/02/04調理場でさばいた魚を一旦ごみ箱に捨て、再度取り出す
セブンイレブン2019/02/07従業員が商品のおでんを口に入れて吐き出す
大戸屋不明従業員が店内で下半身を露出し、芸人のモノマネをする
ファミリーマート2019/02頃従業員が商品のキャップなどを舐める
はま寿司2019/02頃レーンを流れる寿司の中に客がワサビを入れる

(2)不適切動画による損失は想像を絶する。

おそらく、このような動画を投稿する従業員の多くは、仲間内での悪ふざけの延長で、面白半分に行なっているのでしょう。

しかしながら、実際にこのような動画が企業に与える悪影響というものは極めて甚大で、たとえば先ほどの事例にも挙げたくら寿司の場合、不適切動画が世間の非難を浴びたことで株価が130円下落、損失は時価総額27億円にも上りました。

また、SNS上には「もう二度とくら寿司には行きたくない」といった書き込みも殺到しており、非常識な不適切動画が拡散されてしまうことで顧客離れが加速することも懸念される現状があります。

2.不適切動画による被害は個人経営店舗でも起こる。

このようなバイトテロの被害を受けるのは、決して大手チェーンに限った話ではありません。

個人経営の店舗でも十分に起こる可能性があるのです。

実際、平成25年には東京都多摩市に店を構えていた「泰尚」というそば屋が、アルバイト学生の撮影した不適切動画により倒産に追い込まれるという、あまりにも悲しい事件がありました。

このアルバイトは、店舗内の食洗器で自らの足を洗っている様子や、流し台に足をかけている様子をSNSに投稿。

それを見た人々から「不潔だ」という趣旨の批判が店に相次ぎ、投稿の2ヶ月後には破産手続きが決定したのです。

このように、個人経営の店では被害が倒産という悲劇にまで直結してしまうリスクもあり、そのリスク管理の必要性がより重要となるといえるでしょう。

3.バイトテロによる被害を防ぐための対策

先ほどのそば屋さんのような「バイトテロ」から、企業やお店を守るには、どのような対策を取るのが効果的なのでしょうか。

意識しておくべきポイントと具体的な対応をあわせてご紹介していきます。

(1)リスクゼロは不可能、あくまでもリスクの軽減が大切

現在インターネットは私たちの生活にとって、もはや必要不可欠なものとなっており、総務省が発表しているデータを見ても、日本国内の回線のデータ通信量は、2014~2017年の3年間でおよそ3倍以上に増加しています。

これを踏まえて考えれば、このインターネット社会において、バイトテロのリスクをゼロにすることは、実際問題として不可能なのです。

ですから、完璧なゼロを目指すのではなく、できる範囲でのリスクの軽減を目指していくことが、対策の基本的な方針とると考えるのが賢明なのです。

(2)不適切な行為を防ぐためのスタッフ教育

不適切動画の被害を防ぐためには、その動画の発端となる従業員の悪ふざけ自体が行われないよう、以下のような指導を徹底する必要があります。

①全従業員に対して研修を行う

アルバイトなどを含むすべての従業員に研修を行い、一人ひとりのコンプライアンス意識を高めることが大切です。

場合によっては損害賠償責任を負う可能性があることや、刑事罰を受ける可能性があることをしっかりと伝えることも極めて大切なのです。

②現場責任者として正社員を配置する

現場のマネジメントを行う正社員を必ず配置するようにしましょう。

役員や管理職など階層別の課題に沿った内容の研修自体を提供している企業もあります。

(3)そもそも勤務中に端末を持ち込ませない。

従業員の意識改革を行うのと並行して、物理的に動画の撮影ができない環境を作ることも大切なポイントです。

職場へのスマホの持ち込みを禁止することや、透明なバッグを用意し必要なもののみを執務室内へと持ち込ませるようにしましょう。

(4)不適切動画を早期に検知する

このような対策を取っていても、不適切動画がSNSに投稿される可能性はやはりゼロではありません。

万が一投稿されてしまった場合には、より多くの人が目にする前に1秒でも早くその存在を検知し、削除依頼などの対応を行うことが重要です。

そのためにAI技術などを提供している会社のサービスの利用も検討すべきでしょう。

5.万が一不適切動画がアップされてしまった場合

万が一不適切動画がインターネット上にアップロードされてしまったら、その拡散のスピードは極めて早いため、迅速な対応で被害を最小限に留めることが最優先となります。

具体的にはどのような対応が必要となるのか、考えられる内容をまとめてチェックしていきましょう。

(1)早期に検知し、従業員がアップロードした場合には直ちに削除させる

不適切動画の投稿は、発見が遅れれば遅れるほど拡散が進み、より多くの人の目に触れる=非難が集中しやすくなります。

なるべく早くその存在を検知し、削除依頼を出して事態の鎮静化に努めましょう。

(2)いち早く炎上を検知し発信。

SNSで炎上が発生しているにも関わらず、企業側から何の説明も謝罪もないという状況は、さらに火に油を注ぐ結果を招いてしまうケースが多いものです。

反対に公式の謝罪を速やかに行うことで、早期の鎮静化に成功した事例も過去にはあります。

(3)懲戒解雇は原則として可能

不適切動画によって会社や店舗に大きな損害を与えた従業員については、懲戒解雇にできる可能性が高いです。

バイトテロから会社を守ろう

巷をにぎわせているバイトテロの存在は、会社・店舗にとって大きな脅威であり、店の規模によってはそれがそのまま会社の倒産へ直結してしまうこともあります。

たとえ倒産をまぬがれたとしても、傷付いたブランドイメージを回復するには長い時間がかかるため、しばらくは客足がガクッと落ちてしまうことを覚悟しなければならないでしょう。

このような悲劇を起こさないため、不適切な行為自体の抑制、動画を撮影することができない環境の整備、職場全体の体質改善など、全スタッフが全力を挙げて取り組んでいく必要があります。

また、必要に応じて弁護士や司法書士などの専門家の力を借りることがとても大切なのです。

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