最期の手紙【遺言書】を書く前に知っておきたい大切な6つのコト

遺言書の効力とは、どのようなものなのでしょうか。

最近「終活」という言葉が、世間的に注目されたり、書店にエンディングノートが何種類も並んでいたりと、人生の最期をどのように過ごすか、自分の死後に家族にどのようにしてほしいのかということに対し、とても関心が集まっています。

遺言書は、相続トラブルを防ぎ、遺志、すなわち、故人の生前の意向を遺族に伝えることができるため、準備したいと考えている方が多いのではないでしょうか。

今回は、遺言書とはどのようなものか、また法律上どのような効果があるのかご説明します。

1.遺言書とは

遺言書として、法律上の効力が認められるためには、単に相続について希望を書けばよいというわけではないのです。
遺言書の方式についての定めがあり、その方式に従った遺言書にのみ、法律上の効力が認められます。

民法の定める遺言の方式には、主に、公正証書遺言自筆証書遺言秘密証書遺言があります。

それぞれ解説していきます。

(1)公正証書遺言

公正証書遺言(こうせいしょうしょいごん)とは、公証役場で、遺言者が遺言内容を口頭で述べ、それを公証人が記録して作成する遺言書です。

公証人が作成しますから、形式的な要件が欠けていることによって無効になるおそれを回避することができますし、原本が公証役場で保管されるため、紛失や偽造のおそれがなくなります。

なので、もっとも確実な遺言の方法といえますね。

しかし、証人が必ず2人必要となることなど、手続きが面倒な部分もあります。


また、証人の前で遺言の内容を確認することになりますから、証人から遺言の内容が漏れてしまうおそれもあります。


遺言の内容を知られたくない場合には、弁護士や司法書士等の法的に守秘義務がある方に証人を依頼すると良いでしょう。

また、遺産の内容によって金額は異なりますが、作成手数料がかかります。
高額になる場合もありますので、作成される際は事前に確認しておくことをオススメします。

(2)秘密証書遺言

秘密証書遺言とは、遺言書の内容を秘密にしつつ、遺言書の実行を確実にするため、公証役場を利用して遺言書を作成する方法です。

手順としては、まず遺言者(遺言を残したい人)が署名押印の上封印した遺言書を、公証役場に提出し、遺言書であることや遺言者の氏名、住所を口頭で述べます。


公証人は、遺言書が遺言者のものであることを確認して、遺言者の住所、氏名、日付を封書に記入します。
そして、遺言者、公証人、証人がそれぞれ署名、押印し、手続きは完了します。

遺言の内容は、公証人にも、証人にも知られないため、遺言書の内容を秘密にしたまま、遺言書を遺すことができます。

もっとも、遺言書を作成したこと自体は、証人等を通じて知られる危険があります。
また、公証役場には遺言書を作成したという記録が残るだけで、遺言書の保管は自身で行うため、紛失や改ざんのおそれも否定しきれません。


また、公証人が遺言書の内容を確認することがないので、遺言書本体の形式面の不備等によって遺言書自体が無効となるおそれもあります。

作成手数料は一律で1万1000円です。

実務上は秘密証書遺言は、あまり利用されていません。

(3)自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、遺言の全文、氏名、日付を自書し、押印して作成する遺言書です。
現在は、財産目録についてはパソコンで作成することが認められています。

公証役場に行く必要も、証人を依頼する必要もないので、最も手軽に作成できる遺言書であると言えます。
そして、遺言の存在もその内容を秘密にすることができます。

しかし、秘密証書遺言と同様に、遺言書の紛失や改ざん、また内容の不備により、無効となるおそれがあります。

出典:法務省HP「自筆証書遺言書保管制度について」

令和2年7月10日より、遺言書の紛失や改ざん、死後に見つけてもらえないといったリスクを回避する方法として、自筆証書遺言を法務局に保管してもらえる制度(自筆証書遺言書保管制度)が運用開始されました。
自筆証書遺言を作成する場合にはこの制度を活用されるとよいでしょう。

2.遺言を書くメリットってなに?

画像提供:ぱくたそ

ところで、遺言書を書くと、どのようなメリットがあるのでしょうか。

順にみてみましょう。

(1)相続人間の紛争の防止

遺言書を残すことにより、誰に何の財産をどのような割合で相続させるかについて、故人の遺志が明らかになりますから、遺産の帰属について一応の決着がつきます。
そのため、相続人間での紛争を予め防ぐことが期待できます。

(2)相続人全員での遺産分割協議の手間が省ける

遺言書がないと、法定相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。
しかし、遺産全てについて記載した遺言書があることにより、遺産分割協議を行う必要がないため、相続人らの負担を軽減することができるのです。

(3)法定相続人以外にも相続させることができる

孫や内縁の妻などは法定相続人には当たらないため、遺言書がない場合には、原則として遺産を受け取ることはありません(ただし、子どもが既に亡くなっている場合には孫は法定相続人になります)。

ですから、内縁の妻などに財産を遺したいと考えられる場合には、やはり事前に遺言書を作成しておく必要があります。

3、遺言書に書くことが望ましいコト

画像提供:ぱくたそ

遺言書に書いたことの全てが法律上、効果が認められるわけではありません。
遺言書に記載して、法律上の効果が認められる事柄というのは、「遺言事項」として法律に規定されています。

遺言事項は大きく分けますと、財産に関すること身分に関すること遺言執行に関することがあります。
これらの事項については、記載があれば、基本的に法律上の効果が認められます。

ただし、遺言事項であれば、何でも遺言者の思い通りにできるというわけではありません。


遺言書が相続人の遺留分(民法で定められている兄弟姉妹以外の法定相続人が最低限相続できる割合。)を侵害する内容であったとすれば、相続人(財産を受け取る側)は遺留分侵害額請求をすることができます
遺言書に従って財産は相続されますが、その後に遺留分相当額の支払いをしなければならないというかたちで、遺言の効果は修正されるのです。

(1)財産に関すること

相続分の指定、遺産分割方法の指定、遺贈、相続させる旨の遺言、特別受益の持ち戻しの免除など。

(2)身分に関すること

遺言認知、推定相続人の遺言廃除及びその取消しなど。

(3)遺言執行に関すること

遺言執行者の指定など。

4.遺言で注意すべきポイント

遺言について、いくつかルールがあります。ここでは代表的なものをいくつかご説明します。

(1)遺言能力

遺言が有効であるためには、遺言作成時、遺言者に遺言能力があることが必要となります。

ですから、遺言能力が認められない15歳未満の者が作成した遺言書や、認知症等により遺言能力がない者の作成した遺言書は、効力がみとめられません。

(2)検認手続き

検認手続きとは、遺言書の紛失や改ざんを防止するため、家庭裁判所の裁判官が相続人立会いのもと遺言書を確認し、確認する制度をいいます。

自筆証書遺言(自筆証書遺言書保管制度を利用している場合を除く)や秘密証書遺言の場合に検認の手続きが必要となります。

秘密証書遺言の場合に、検認の手続きをせずに開封してしまうと、その時点で遺言書は原則として無効となります。(ただし、自筆証書遺言としての要件を満たす場合には、自筆証書遺言として有効になります)。
自筆証書遺言の場合には、検認の手続きを受けずに遺言書を開封してしても遺言書が無効になるわけではありませんが、検認を受けずに開封したことによって、遺言書の効力について他の相続人から疑義を呈されるなど紛争になる可能性がありますし、開封した人は5万円以下の過料に処せられる可能性もあるため、くれぐれも注意が必要です。

(3)複数の遺言書があるとき

遺言書が複数ある場合には、日付の新しいものが優先します。
しかしながら、従前の遺言が全て無効となるわけではなく、新しい遺言と矛盾する部分に限り、古い遺言が無効となります。

(4)共同遺言

複数人がひとつの遺言書で共同して遺言をすることを、共同遺言といいます。
例えば、夫婦で「夫が先に死んだ場合には・・・、妻が先に死んだ場合には・・・。」として遺言書を作成することをいいます。

共同遺言は、効力が認められません。夫婦でもそれぞれ遺言書するように注意してください。

5.専門家に相談することがとても大切。

画像提供:ぱくたそ

いかがだったでしょうか。この記事で、すこしでも遺言書について知っていただければ幸いです。

今まで見てきたように、遺言書には多くの決まりがあります。
確実に遺志を相続人らに伝えるためにも、形式面も内容も十分に注意して作成する必要がありますね。

しかしながら、一般の方々にとって、このような遺言書を作成することは極めて困難であり、後々にトラブルが生じてしまうといったケースはたくさんあります。

そういった事態を防ぐためにも、遺言書の作成は弁護士か司法書士に相談することがおすすめです。

費用はどのくらいかかる?

遺言書の作成を弁護士や司法書士へと依頼した場合、費用がどのくらいかかるのかはとても心配ですよね。

この点、弁護士や司法書士に依頼するに際して生じる費用は、概ね10万~15万円程度です。

もちろん、遺言の内容が複雑になると20万円を超えることもあります。

「弁護士」と「司法書士」どっちに頼むべき?

まず、「弁護士」も「司法書士」も法律のプロフェッショナルですから、どちらでないといけないということは全くありません。

弁護士は遺言書がない場合や遺言書の内容が不適切である場合に生ずる紛争案件を日ごろから取り扱っていることから、これらの案件を担当した経験に基づいてアドバイスを行うことが可能です。

また、司法書士は不動産登記を専門としているため、相続に伴う登記(相続登記といいます)についてのアドバイスが可能ですし、法務大臣から簡易訴訟代理権を与えられてる司法書士であれば、140万円以下で簡易裁判所に係属する裁判についての取り扱いも可能です。

ですので、相談したい内容や費用などによって、相談先を決めることがオススメですし、費用的に余裕があれば両方に相談することはとてもオススメです。

遺言書は遺された家族を守る最後のメッセージ。せっかく作成するのですから、多少の費用はかかっても、トラブルを防止し、自分の意思を確実に実現できる内容の遺言書を作成することを第一に考えるようにしましょう。

遺言書の作成を思い立ったら、まずは一度、弁護士などの専門家に相談してみるようにしましょうね。

おすすめの記事