【離婚】離婚届を勝手に出すと犯罪?不受理申し出について教えます!

離婚をするときに必ず必要となるのが、離婚届。

非常に重要な文書ですが、お互いの気持ちが固まっていないなど、様々な問題によってなかなか提出が難しくなることもあるでしょう。

ところで、離婚届を勝手に出すと、どんな問題が生じるのかについては意外と知られていません。

喧嘩したとき「離婚したい」と言っていたから問題ない!のように簡単に考えて、夫に内緒で離婚届を提出すると、後々大変なことに発展します。

今回は、離婚届を勝手に出すことによる問題点について解説していきます。

1 離婚届を勝手に出すと離婚は受理されるのか。

(1)離婚届を提出する方法

離婚届の提出方法ですが、原則として各市町村の役所の窓口に直接提出します。

窓口での提出以外の方法として、郵送での提出も可能ですが、郵送で提出した場合はすぐに書類の不備を確認してもらうことはできません。

万一提出した離婚届に不備があった場合は、後日書類の訂正に対応する必要が生じますから、離婚届が受理され離婚が成立するのが遅くなるということがよくあります。

なお、調停や裁判によって離婚が成立した場合においては、調停・判決での離婚成立後10日以内に離婚届を提出する決まりになっているので、注意してください。

あまり知られていませんが、実は役所の窓口が開いていない時間帯に離婚届を提出することもできます。

もっとも、この場合も、訂正が必要な場合は窓口が開いている時間帯にもう一度役所に赴か泣ければならず、手間となってしまうことになります。

(2)夫婦のいずれかが離婚届を提出した場合

離婚問題でもめた夫婦や顔を合わせたくないと考える夫婦にとって、2人一緒に離婚届を提出しに行くことができないこともあるでしょう。

この点、離婚届は夫婦2人で提出しに行かなければならないという決まりはなく、夫婦のどちらか一方が提出しに行っても問題はありません。

夫婦の一方が離婚届を窓口で提出した場合、窓口に行かなかった夫婦の一方には、後日離婚届を受理したことを証する受理通知が郵送されます。

また、この受理通知が郵送されることによって、窓口に行かなかった夫婦の一方も離婚が無事に成立したことを知ることができます。

ですから知らないうちに離婚届を提出され、離婚が成立したことを知らないまま過ごすという事態は、基本的には生じません。

(3)離婚届の提出時に、離婚意思の確認はされない

離婚届を提出する際に、窓口で特段の離婚意思の確認はなく、離婚届の形式に問題がなければそのまま離婚届は受理されることになります。

もし、夫婦の一方に離婚意思がなかったのだとしても、勝手に離婚届を提出すれば離婚届がそのまま受理され離婚が成立してしまう可能性が十分にあります。

もちろん、勝手に離婚届を提出することは、犯罪に該当する可能性がありますので、離婚の意思の確認がされないからといって、配偶者の承諾なく勝手に離婚届を提出することは決して許されることではありません。

(4)離婚届が受理されないケース

役所に離婚届を提出したにもかかわらず、その離婚届が受理されないケースは、以下の場合が挙げられます。

①離婚届に形式的な不備が存在する場合

離婚届に形式的不備がある場合、離婚届は受理されません。

記入すべき項目が記入されていなかったり、本籍や住所等記入したものに誤りがあったりする場合は、離婚届を訂正する必要があります。

②離婚届不受理申出がされている場合

あらかじめ、離婚届不受理申出がされている場合も、離婚届は受理されません。

離婚届不受理申出とは、離婚届を受理しないよう役所に申し出る制度です。

離婚届は、夫婦の一方のみで提出することができることに加え、離婚届を提出したときに夫婦双方の離婚意思の確認はありません。

そこで、ご自身に離婚意思がないときに、相手方が無断で離婚届を提出しないよう、あらかじめ離婚届不受理申出をしておくことが可能です。

離婚届不受理申出の有効期限は無期限なので、申出人が取下げをしない限り、離婚届不受理申出の効果はずっと続くことになります。

また、離婚届不受理申出がされている場合でも、申出をした本人が離婚届不受理申出の取り下げをすれば、その後離婚届を提出することが可能ですからご安心ください。

2. 離婚届を勝手に出した場合、どんな罪になるの?

では、配偶者の知らない間に、勝手に離婚届を提出した場合、どのような罪に問われるのでしょうか。

不貞行為をしている相手と早く再婚したいなどの理由から離婚届を偽造する人がいますが、以下の犯罪に該当する可能性があります。

離婚届を勝手に作成し提出することは犯罪ですから、絶対にやめてください。

(1)電磁的公正証書原本不実記録罪(刑法157条1項)

戸籍などの公的な書類を作成するときに虚偽の内容を伝え、コンピューターなどに記録された場合には「電磁的公正証書原本不実記録罪」に該当する可能性があります。

離婚届を配偶者に無断で提出することは、戸籍に関して虚偽の内容を伝えることに該当し、電磁的公正証書原本不実記録罪の罪に問われる可能性があります。

(2)有印私文書偽造罪(刑法159条1項)・偽造有印私文書行使罪(刑法161条1項)

離婚届は、当然ながら夫婦双方の意思のもとに作成されなければならないものです。

したがって、夫婦の一方がパートナーに無断で離婚届を作成し提出したとなれば、パートナーの名義を勝手に用いて離婚届を偽造したことになります。

行使目的で離婚届を作成すればこの時点で有印私文書偽造罪が成立し、離婚届を実際に提出すれば偽造有印私文書行使罪が成立します。

3.「離婚してもいい!」と言われた場合はどうなるのか。

夫婦喧嘩などの何らかの拍子で「もう離婚してやる!」などと言われた場合、後日になって配偶者に内緒で離婚届を勝手に提出しても問題ないのでしょうか。

解説していきます。

(1)離婚届には本人の署名押印が必要

もとより、離婚届には夫婦それぞれの署名押印が必要です。

たとえ喧嘩の最中などに、相手が離婚に同意する発言をしていたとしても、やはり相手の署名押印を勝手にすることは許されず、夫婦それぞれが自分の署名押印をしなければなりません。

絶対に勝手に相手の署名押印をしないようにしてください。

(2)すでに相手が離婚届に署名押印をしている場合

では、相手がすでに自分の署名押印を離婚届に済ませている場合は、配偶者に内緒で離婚届を提出しても問題ないのでしょうか。

配偶者が自分で署名押印をしているので問題ないように見えますが、離婚が問題なく成立するには、離婚届に署名押印をするだけでは足りません。

離婚届提出時点での離婚意思が必要となります。(提出する、まさにその時に離婚意思が存在せねばなりません。)

ですから、前に「離婚してやる!」などと言って、配偶者が離婚届に署名押印していたとしても、離婚届を提出する段階で離婚意思がなければ、離婚は成立しないのです。

4.その後のリスクはどうなのか。

上記でご説明した、刑事事件として処罰される他に、離婚届を勝手に提出した後、どのような流れが起こりうるか、ここで確認しておきましょう。

(1)配偶者が離婚に納得している場合は、そのまま離婚成立

離婚届を配偶者に内緒で勝手に提出しても、配偶者も離婚意思があり離婚に納得している場合はそのまま離婚成立となる場合も存在します。

離婚届自体は、夫婦揃って提出する必要はありませんので、双方に離婚意思があるのであれば離婚届の形式・実体共に問題がないでしょう。

(2)離婚無効調停・離婚無効訴訟

配偶者には離婚意思がなく、離婚届を勝手に提出したことに配偶者が憤った場合においては、離婚に関する問題が長期化・複雑化する可能性が極めて高くなるでしょう。

離婚届を勝手に提出された配偶者は、離婚無効調停や離婚無効訴訟を提起することが多いです。

繰り返しますが、離婚が成立するには、形式的に不備のない離婚届が提出されるだけでなく、夫婦双方の離婚意思が必要です。

離婚意思がないにもかかわらず、離婚届を勝手に提出され離婚が成立したとなれば、離婚届を勝手に提出された配偶者が離婚の無効を主張する可能性は十分考えられます。

(3)慰謝料請求

離婚意思がないのに、離婚届を勝手に提出され離婚を成立させられた側としては、精神的苦痛を被ったとして慰謝料請求をしてくる可能性があります。

5.専門家への相談がとても大切

新しいパートナーと再婚したいなど、離婚を急ぎたい気持ちはあるものでしょう。

しかしながら、離婚届を勝手に出すことは絶対にしてはいけません。

離婚届を出すのであれば、今のパートナーとしっかり話し、双方が納得した上で離婚届を提出することが大切です。

今のパートナーと離婚の話でトラブルに発展しそうなケースにおいては、離婚に至る戦略をしっかり立てるためにも、まずは弁護士や司法書士に相談をしてみることがとても大切です。

「弁護士」や「司法書士」に依頼するといくらくらいかかる?

それでは、弁護士や司法書士という法律のプロフェッショナルに依頼する場合、どのくらいの費用が発生するのでしょうか。

まず、離婚の事案における「弁護士」と「司法書士」の業務の違いについて確認しましょう。

司法書士と弁護士の違いは、扱える業務の範囲にあります。弁護士の場合は、法律相談から、相手との交渉、法的書類の作成、調停や訴訟の代理人など、法律にかかること全てを依頼することができます

もっとも、司法書士の場合は、不動産や会社の登記、後見人、遺言書の作成など相続にかかる業務等を任せることができます。

なお、冬季関係の業務に関しては司法書士の専門性は圧倒的に高く、司法書士に相談にいく弁護士もたくさん居るのが現状です。

さらに、司法書士の中で法務省の「簡裁訴訟代理能力認定考査」に合格して、認定を受けた認定司法書士であれば、140万円以下の調停や民事訴訟で、代理人と務めることが可能です。

離婚問題において司法書士にできること

離婚に係る事案において、司法書士にできることは次の通りです。

  • 合意済みの離婚協議書を公正証書で作成してもらえる。
  • 財産分与登記を依頼できる。
  • 140万円以下の慰謝料請求を依頼できる(認定司法書士のみ)。

1.離婚協議書を公正証書で作成してもらえる

司法書士に依頼できることの一つが、合意済みの離婚条件について、離婚協議書を公正証書で作成してもらうことです。

具体例として、財産分与はいくら、離婚慰謝料はいくら、養育費はいくら、面会交流はどのように実施するのかなど、離婚時に双方合意した条件について整理した離婚協議書を作成し、これを公正証書にすることで、後々のトラブルを回避することができます。

また、離婚時に約束した慰謝料の支払いや養育費の支払い等の金銭債権について、公正証書化に伴って執行認諾文言付きにすれば、仮に相手がこれらの支払いを怠った場合、訴訟手続を減ることなく強制執行の手続きが可能です。

2.財産分与による不動産名義変更登記を依頼できる

司法書士に依頼すべきと言えるのが、財産分与による不動産名義変更登記です。

例えば、婚姻期間中に購入した不動産の名義を、離婚に伴う財産分与で変更するという場合、司法書士に名義変更を依頼するのが通常です。

この業務は弁護士よりも司法書士に依頼することを強くお勧めいたします。

3.法務大臣認定司法書士なら140万円以下の慰謝料請求を依頼できる

離婚に伴って相手配偶者に何らかの慰謝料を請求したいという場合、慰謝料額が140万円以下であれば、認定司法書士にその訴訟の代理を依頼することも可能です。

しかしながら、慰謝料額が140万円を超えるような場合には、司法書士がこれを扱うことは弁護士法おいて禁止されますから、これを超えて慰謝料を請求したいというのであればはじめから弁護士に依頼するべきでしょう。

しかしながら、初めからどちらにするかを決めるのはとても難しいものです。

初回相談料無料の事務所も多く存在していますから、まずは両方に相談してみることをおすすめいたします。

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